警察階級をわかりやすく解説!役職との関係とは

最終更新日:2025年1月6日
警察の階級

日本の警察は、国民の安全と秩序を維持するために、都道府県警察を中心として活動しています。各都道府県には「警察本部」が設置されており、全国を統括する「警察庁」と連携して治安維持に当たります。
この警察組織を効率的に運営し、役割・責任を明確にするうえで欠かせないのが「階級制度」です。警察官は職務経験や試験合格などの要件を満たすことで昇任が可能ですが、その昇任先や役割は複雑に分かれています。

本記事では、警察階級をキーワードとして、各階級の特徴や役割、昇任ルート、警視総監と警察庁長官の違いなどを総合的に解説します。警察官を目指す方や、警察組織に興味を持つ方にとって有益な情報をまとめました。

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警察階級の基本一覧と位置づけ

日本の警察では、以下のような階級体系が一般的に認知されています(下位から上位の順に列挙)。

  1. 巡査(じゅんさ)
  2. 巡査長(じゅんさちょう)
  3. 巡査部長(じゅんさぶちょう)
  4. 警部補(けいぶほ)
  5. 警部(けいぶ)
  6. 警視(けいし)
  7. 警視正(けいしせい)
  8. 警視長(けいしちょう)
  9. 警視監(けいしかん)
  10. 警視総監(けいしそうかん)

なお、警察庁においては「警察庁長官」が組織トップですが、これは“階級”ではなく“職位”です。したがって、警視総監(東京都の警察トップ)の階級よりも上位の職位として警察庁長官が存在するとイメージしておくとわかりやすいでしょう。

各階級の詳細

巡査(じゅんさ)

  • 概要
    巡査は警察官の最初の階級であり、いわゆる「交番で立っているお巡りさん」として一般の人に最もなじみがあります。警察学校を卒業し、現場に配属された段階でほとんどの警察官が「巡査」となります。
  • 主な業務
    • 交番勤務(パトロール、道案内、相談対応など)
    • 交通指導・取り締まり
    • 刑事業務の補助
    • 災害時や緊急時の初動対応など
  • 特徴
    最も基礎となる階級であるため、警察官としての基礎的な知識・技能を習得しつつ、実地経験を積んでいきます。巡査として一定期間勤務しながら、昇任試験や実績に応じて「巡査長」へ進んでいくケースが多いです。

巡査長(じゅんさちょう)

  • 概要
    巡査長は、巡査からワンランク昇任した階級です。実務経験を積むなかで、勤務評価や昇任試験に合格すると巡査長となることが一般的です。階級章の袖章や肩章において、巡査とは区別がつきます。
  • 主な業務
    • 巡査時代の業務に加え、後輩巡査への指導
    • より複雑な事件の初動捜査や取りまとめ
    • 交番や駐在所でのリーダー的な役割
  • 特徴
    巡査時代よりは一段階責任が重くなりますが、まだ「部下を統率する管理者」というよりは、現場の主力として活躍する立場です。巡査長からさらにキャリアを積んで、巡査部長への昇任を目指します。

巡査部長(じゅんさぶちょう)

  • 概要
    巡査部長は、一般的に「係長」的なポジションとして理解されることがあります。巡査・巡査長に対し、現場の指揮をとったり、業務を調整したりする役割を担います。
  • 主な業務
    • 部下である巡査や巡査長の指導・監督
    • 事件・事故現場での初動捜査の指揮
    • 交番・派出所・警察署の各種業務の取りまとめ
    • 重要性の高い捜査案件の一部担当
  • 特徴
    巡査部長になることで、現場のリーダーとして振る舞う機会が増えます。階級が上がるにつれ、デスクワークの割合が増えるイメージを持たれがちですが、巡査部長は依然として現場での活動が中心です。

警部補(けいぶほ)

  • 概要
    警部補は、いわゆる「幹部候補」の入り口とも言われる階級であり、管理職に近い立場となります。巡査部長から昇任するためには、一定年数の勤務や昇任試験、各種研修の受講が必要とされます。
  • 主な業務
    • 署内の係や班の運営・指導
    • 重大事件の捜査指揮の補佐
    • 担当エリアの治安維持計画の企画・実施
    • 要人警護の計画立案(SP関連)など
  • 特徴
    警部補になると管理業務の比率が増し、現場だけでなく署内や組織全体をマネジメントするスキルが求められます。警部補は「警部」以上への昇任に向けて重要なステップとなる階級です。

警部(けいぶ)

  • 概要
    警部はさらに上級幹部の一角であり、警察署の課長級に相当する場合もあります。部下を率いて捜査を統括したり、署の運営に深く関わったりする要職です。
  • 主な業務
    • 署内の一課または係全体を統括
    • 捜査本部の責任者(規模に応じて)
    • 管区警察学校や各種研修での講師や指導担当
    • 都道府県警察本部での企画立案部門への従事など
  • 特徴
    警部になると、一つの署や部署で大きな裁量を持ちます。組織内部での人事や予算管理に携わることもあり、「組織を動かす」という視点が求められます。

警視(けいし)

  • 概要
    警視は、警察署長や都道府県警察本部の課長級に就くことの多い階級です。より広範囲かつ高度なマネジメント能力が要求される幹部ポジションになります。
  • 主な業務
    • 警察署の署長や本部内の大きな部署の指揮
    • 県内の広域的な治安維持計画の策定
    • 重要犯罪や大規模災害への対応策の立案・指導
    • 国際テロ対策やサイバー犯罪対策など先端分野の統括
  • 特徴
    警視クラスになると、都道府県警察の中核を担う存在と言えます。事件対応だけでなく、地域住民との連携や情報発信など、幅広い業務範囲をマネジメントする立場です。

警視正(けいしせい)

  • 概要
    警視正は、都道府県警察本部の部長級ポジションや、警視庁(東京都)での上級幹部として活躍します。組織全体の計画や指揮系統に深く関わり、大規模な予算や人的資源を管理する責任者です。
  • 主な業務
    • 都道府県警察本部内での部長職(刑事部長、生活安全部長など)
    • 重要政策・条例の企画・提案
    • 大規模行事(国際会議、オリンピックなど)の警備・運営管理
    • 組織改革や研修制度の企画
  • 特徴
    警視正レベルになると、現場の指揮よりはよりマクロな視点で警察運営を考える役割が強くなります。警視正以上は、警察庁からの出向や都道府県警察内部での昇任により任命されるケースがあります。

警視長(けいしちょう)

  • 概要
    警視長は、さらに上位の幹部階級であり、大都市警察や警察庁内部の要職を担うことが多い階級です。都道府県警察本部長に就任する場合もあります(ただし本部長として就任する階級は警視正の場合もあり、都道府県の規模や人事配置によって異なります)。
  • 主な業務
    • 警視庁(東京都)の主要部署の部長や参事官
    • 大都市警察本部長
    • 警察庁内局の審議官クラス
    • 国際的な警察協力(ICPOなど)の窓口業務指揮
  • 特徴
    警視長クラスになると、全国規模や国際的な視点を持って指揮・管理をする必要が出てきます。社会情勢の変化を受けて、先端テクノロジー犯罪対策や自然災害への備えなど、多岐にわたる領域をカバーすることが求められます。

警視監(けいしかん)

  • 概要
    警視監は、都道府県警察本部の本部長を務める場合や、警察庁の局長級など、トップクラスの幹部に与えられる階級です。全国の警察運営に大きく関わる重要ポジションとなります。
  • 主な業務
    • 都道府県警察本部長(政令指定都市や大きな県など)
    • 警察庁内の局長(刑事局長、生活安全局長など)
    • 国家レベルの治安維持・公共政策の立案・実施
    • 大規模国際イベント(サミットなど)での警備体制総括
  • 特徴
    警視監クラスの警察官は、まさに日本の警察の根幹を支えています。政治家や行政機関、海外組織との折衝・調整など、その業務範囲は国内外に及びます。

警視総監(けいしそうかん)

  • 概要
    警視総監は、警視庁(東京都)における最高位の階級です。警視庁は日本最大規模の地方警察組織であり、そのトップである警視総監は非常に大きな権限と責任を有しています。
  • 主な業務
    • 東京都全域の治安維持・警備計画の総指揮
    • 国家的行事・VIP警護などに関する指導・調整
    • 警察庁との連携・協議
    • 東京都民を対象とした防犯・交通安全施策の最終決定
  • 特徴
    警視総監は、都道府県警察としては最上位の階級ですが、国家警察である警察庁の長である「警察庁長官」の職位とは区別されます。もっとも有名な例としては、ニュースや報道でよく耳にする「警視総監」会見です。首都・東京を統括するため、その責務は極めて重大といえます。

警察庁長官と警視総監の違い

よく混同されがちですが、警視総監は階級、警察庁長官は職位です。具体的には以下のように区別されます。

  • 警察庁長官
    • 国家公務員としてのトップクラスに位置する職位。
    • 警察行政全般を統括し、日本全国の警察活動を指揮・監督する。
    • 警視総監よりも上位の「職位」であるが、「警察庁長官」という“階級”があるわけではない。
    • 一般的には警視監以上の階級を保持して任命される。
  • 警視総監
    • 東京都の地方警察組織である警視庁の最高階級。
    • 都内の犯罪・事件を統括し、治安や交通を含めた警察活動を指揮・管理する。
    • 国全体の警察政策については警察庁長官の指示・方針と連携しながら動く。

結論として、警察行政のトップはあくまで「警察庁長官」であり、東京都警察組織のトップが「警視総監」という位置づけになります。

昇任ルートとキャリア・ノンキャリアの違い

日本の警察では、昇任ルートに大きく「キャリア組」と「ノンキャリア組」の2種類があると言われています。これは俗称であり、正式な区分ではありませんが、業務や人事上で重要な要素となります。

キャリア組とは?

  • 定義
    • 国家公務員採用総合職試験(旧国家I種試験)に合格し、警察庁に採用された者が一般的に「キャリア官僚」と呼ばれます。
    • 警察庁に入庁後、一定の期間で都道府県警察にも出向し、実務経験を積む。
  • 特徴
    • 若くして警視正や警視長クラスまで昇任することが多い。
    • 警察庁の要職に就き、国家レベルの政策立案に関わる。
    • 将来的に警察庁長官や警視総監となる人材も多く輩出。

ノンキャリア組とは?

  • 定義
    • 地方公務員として各都道府県警察の採用試験(警察官採用試験)に合格し、巡査からスタートする一般警察官。
    • あるいは国家公務員採用一般職試験(旧国家III種試験)に相当する枠から警察庁職員となる人も「ノンキャリア」と呼ばれることがある。
  • 特徴
    • キャリア組に比べると昇任スピードは緩やかだが、地域に根ざした経験を多く積む。
    • 巡査→巡査長→巡査部長…と階段を着実に上る。
    • 警視クラスまでは十分昇任可能で、優秀なノンキャリアからは警視正や警視長になる例もある。

結局のところ、キャリアかノンキャリアかで警察官としての任務に変わりはありませんが、組織内でのポストや出世のスピードは異なる傾向があります。

都道府県警察と階級の関係

日本の警察組織は、警察庁(中央組織)と都道府県警察(地方組織)に大別されます。都道府県警察はそれぞれ独立した存在ですが、警察庁の指導・監督のもとに一体となって動いています。
階級は全国共通ですが、都道府県ごとに人事異動や昇任試験の実施タイミングが微妙に異なることがあるため、細部の運用は各自治体で若干違いが生じる場合があります。また、大都市警察(例:警視庁、大阪府警察、神奈川県警察など)と地方の県警察では、求められる警備・捜査の規模や種類にも差があるのが実情です。

警察階級の歴史的背景と変遷

日本の警察制度は、明治時代から何度も改組・改正を繰り返してきました。現在の形となった大きなきっかけは、第二次世界大戦後のGHQ(連合国軍総司令部)による占領政策であり、警察法の制定・改正を経て現行の「都道府県警察」と「警察庁」という二元体制に落ち着いた経緯があります。

  • 戦前~戦中
    • 内務省警保局が警察制度を統括。
    • 階級や役職は警察制度の中央集権的な色彩が強かった。
  • 戦後(GHQ時代)
    • 自治体警察や国家地方警察などが設置され、地方自治の原則を重視する改革が行われる。
    • 同時に警察隊(旧警察予備隊の前身)なども誕生し、防衛面の警察的役割も変化。
  • 現在
    • 警察法(昭和29年法律第162号)に基づき、警察庁と都道府県警察が設置される。
    • 階級制度は基本的に戦前の形式を踏襲しつつ、組織の規模拡大・業務の多様化に合わせて柔軟に運用されている。

このように、日本の警察階級は歴史の流れのなかで形を変えながら、現在の統一的な体系に落ち着いています。

階級と装備・制服の関係

警察官の装備・制服には、階級による違いが存在します。肩章や腕章、帽章のデザインが異なり、一目で「どの階級なのか」を判別できる仕組みになっています。

  • 巡査・巡査長・巡査部長
    • 肩章や腕章にストライプや星の数が少なく、階級を示す記号がシンプル。
    • 制服のカラーはほぼ共通だが、巡査部長以上になると若干の意匠の差が出る場合も。
  • 警部補・警部・警視
    • 星や桜の徽章の数・配置が増える。
    • 礼服や制帽にも上級階級ほど装飾が加わる傾向がある。
  • 警視正以上
    • 桜の大きさや配置がより華やかになる。
    • 警視総監クラスになると、公式行事で着用する礼服がより豪華になることも。

こうした階級章は、海外の軍や警察でも見られる**「階級を示す記章」**として世界的に一般的なものです。日本の警察では、独自の意匠として桜や星が多用されています。

警察官になるには?採用から階級のステップ

警察官を目指す場合、一般的には以下の流れをたどります(ノンキャリアの場合)。

  1. 警察官採用試験に合格
    • 都道府県の警察官採用試験(高校卒業程度・大卒程度など複数区分あり)
    • 筆記試験、体力試験、面接などをクリアする必要がある。
  2. 警察学校での初任科教育
    • 採用後は半年〜1年程度(都道府県による差あり)の警察学校に入校。
    • 法律、逮捕術、拳銃操法、運転技術など基礎を学ぶ。
  3. 巡査として現場に配属
    • 交番や派出所に配属され、先輩警察官の指導を受けながら実務を学ぶ。
  4. 巡査長への昇任
    • 一定期間勤務後に昇任試験や人事評価をクリアすると「巡査長」に。
    • 階級が上がっても現場の実務に変わりは多くなく、引き続き経験を積む。
  5. 巡査部長への昇任
    • 管理的役割が増え、後輩指導や事件の初動捜査を統括する立場に。
  6. 警部補以上への昇任
    • 昇任試験や研修、学歴・勤務成績など総合評価によって決定。
    • 警部補以上になると組織マネジメントの素養が求められる。

ノンキャリアでも昇任を重ねれば警視や警視正まで到達することは可能です。現場経験が豊富な幹部は組織にとって貴重な人材であり、各都道府県警察の要職として活躍します。

まとめ

「警察の階級」は、警察組織を効率的に運営し、各警察官の責任と権限を明確にするために欠かせない仕組みです。巡査からスタートし、巡査長、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、そして警視総監へと進む階級は、昇任試験や実績によって着実にステップアップできます。

一方、警視総監は東京都の警察組織(警視庁)のトップであり、日本全体の警察行政を統括する立場としては「警察庁長官」が存在します。警視総監はあくまで階級であり、警察庁長官は職位です。
また、キャリアとノンキャリアの違いはありますが、最終的にはどちらも現場を守り、社会の安全を維持するために重要な役割を担っています。警察官の仕事は多岐にわたり、日々の交番勤務から大規模な国際会議の警備、サイバー犯罪対策、災害支援に至るまで、国民生活の根幹を支える存在です。

本記事が、警察階級の基本的な仕組みや、それぞれの階級がどのような役割を果たしているのかを理解する一助となれば幸いです。もし警察官を志望されている方であれば、目標とする階級や専門分野をイメージしながら、採用試験の準備やキャリアプランを考えてみてください。

日本の治安を守る「警察」という存在を、階級という視点から改めて見つめ直すことで、その組織力と使命感の大きさを再認識できるのではないでしょうか。

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