高度プロフェッショナル制度とは?メリット・デメリットと企業事例を踏まえて徹底解説

最終更新日:2025年3月28日
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「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」は、日本の労働法において近年導入された新しい働き方制度の一つです。本記事では、高度プロフェッショナル制度の概要からメリット・デメリット、そして導入している企業事例までを深く解説します

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高度プロフェッショナル制度とは

高度プロフェッショナル制度(高プロ)は、特定の高度な専門知識や技能を有する労働者が対象となる制度です。労働基準法の改正により、2019年4月から施行されました。

従来の労働時間制度では、「1日8時間・週40時間の労働時間を基準とする」労働法上の時間規制や割増賃金の支払い義務が存在します。しかし高度プロフェッショナル制度を適用することで、一定の年収要件を満たし、高度専門職として認められた労働者に対しては、労働時間の規制から外れるという大きな特徴があります。

つまり、企業と従業員の間で合意の上、「この制度を使うなら、通常の時間管理ではなく、成果を重視した働き方に移行する」という考え方です。名称に「プロフェッショナル」とあるように、専門性の高い技術者やコンサルタント、金融ディーラーなどが対象に想定されています。

高度プロフェッショナル制度が導入された背景

日本の労働環境では長時間労働が大きな社会問題となってきました。そこで政府は「働き方改革」の一環として、成果を重視する制度柔軟な働き方を可能にする制度を整備し始めています。裁量労働制やテレワークの推奨などもその流れの一部です。

しかし、高い専門性を持ち、年収も高額な人材が長時間労働規制の枠に縛られることで、一律の残業規制や時間管理が実態にそぐわないケースも多々あります。そうした声を受けて、対象者を限定したうえで成果に注目し、労働時間の枠組みから外すために導入されたのが高度プロフェッショナル制度です。

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務や要件

高度プロフェッショナル制度の対象となるためには、以下のような要件があります。

  1. 対象業務の範囲
    金融商品のディーリングやアナリスト、コンサルタント、研究開発職など、高度な専門知識を必要とする業務が列挙されています。対象業務は労働基準法施行規則等で限定的に定められており、現段階で対象職種は多くはありません。
  2. 一定の年収要件
    制度を適用するには、所定の年収基準(おおむね1,075万円以上 ※金額は改正により変動する可能性あり)を満たす必要があります。これは一般的な給与水準から見ると非常に高い金額設定です。
  3. 労使合意の締結
    企業が一方的にこの制度を適用するわけではなく、労働者本人との合意が必要です。また、企業側は労使委員会などで過半数代表者の同意を得る必要があります。
  4. 健康管理時間の確保や休日確保措置
    時間規制がなくなるとはいえ、無制限に働かせてよいわけではありません。年間104日の休日確保2週間に1回以上の連続休暇といった健康確保措置を設ける必要があります。

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度がもたらすメリットは、主に以下のような点が挙げられます。

  1. 成果にフォーカスした働き方
    時間ではなく成果を重視するため、従業員のモチベーション向上につながりやすく、プロフェッショナルとしての能力を存分に発揮できる環境が整います。
  2. 企業の生産性向上
    企業としては、高度な知識やスキルをもつ人材が自由に働き、効率よく成果を出すことで、組織の生産性を向上させることが期待できます。
  3. 働く時間や場所の柔軟性
    従来の労働時間管理から外れるため、在宅勤務やフレックスタイムなどを組み合わせることで、時間に縛られない働き方が実現しやすくなります。
  4. 高報酬の提示が可能
    元々高い年収が必要という前提がある制度なので、企業は優秀な人材の採用や流出防止のために、高待遇を用意しやすいというメリットもあります。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

一方で、導入や運用には慎重な検討が必要です。デメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  1. 長時間労働を助長する可能性
    時間規制がないため、成果を求められすぎると過重労働につながる危険があります。実際、導入時には労働者の健康確保措置や休暇取得義務などの対策を慎重に考える必要があります。
  2. 健康リスク・労災リスク
    過重労働が顕在化しやすい環境となるため、心身の健康問題や労災リスクが高まる可能性があります。万が一従業員が過労状態になれば、企業の社会的信用や訴訟リスクにも繋がりかねません。
  3. 適用対象が限定的
    高度プロフェッショナル制度は、高度な知識・技能を有し、年収要件を満たした一部の人材のみが対象です。導入したからといって、組織全体の労働条件を一気に改善できるわけではありません。
  4. 合意形成の難しさ
    労働時間規制を外す制度であるがゆえに、労使双方の理解と協力が不可欠です。労働組合や従業員代表などからの合意を得るプロセスは、場合によっては長引き、導入ハードルが高くなることもあります。

導入時に必要な手続き・ポイント

高度プロフェッショナル制度を導入するためには、法律で定められた手続きを踏む必要があります。主に以下のステップが必要となるでしょう。

  1. 労使委員会の設置と労使協定の締結
    過半数代表者を含む労使委員会を設置し、該当業務や対象者、健康確保措置について詳しく規定した協定を締結します。
  2. 対象者との個別合意
    従業員本人にも趣旨や労働条件、健康管理体制などを十分に説明し、書面で合意を得る必要があります。
  3. 就業規則の整備
    高度プロフェッショナル制度を運用するための具体的な勤務形態や休日取得、賃金制度などを就業規則に明記しましょう。
  4. 健康管理体制の確立
    時間管理をしない代わりに、定期的な産業医面談や健康診断の実施、休暇取得の徹底など、健康確保措置を整えます。
  5. 労働基準監督署への届け出
    必要な書類を労働基準監督署に届出し、受理されることで正式に制度が運用可能となります。

高度プロフェッショナル制度の導入事例

高度プロフェッショナル制度の導入例はまだ多くはありませんが、外資系企業や国内大手企業の一部で実際に適用が始まっています。ここでは事例の一部を紹介します。

事例1:外資系コンサルティングファーム

高年収かつコンサルタントとして高度な専門能力が求められるため、制度導入が比較的スムーズでした。もともと成果主義の文化が強い環境だったこと、従業員の自己管理能力が高かったこともあり、制度導入後も混乱は少なかったようです。

ポイント

  • 従業員の働き方に合わせたフレックス制在宅勤務を広く導入
  • 産業医による健康管理面談を毎月実施し、過重労働を未然に防止
  • 高度プロフェッショナル制度の条件に合致しないコンサルタントには別制度(裁量労働制)を適用して柔軟に対応

事例2:国内大手メーカーの研究開発部門

研究開発部門の一部職種(研究職や開発職)を対象に制度を導入。先進技術の研究者が多く、高度な専門スキルを有する人材を確保するために制度活用を検討しました。

ポイント

  • 年収水準が高い研究職を中心に対象を限定
  • 労働組合との交渉に時間を要したが、在宅勤務増加を見越した働き方改革とセットで導入
  • 成果の可視化が課題となり、目標管理制度(MBO)を強化

高度プロフェッショナル制度導入の成否を分けるポイント

制度が成功するかどうかは、企業風土や運用の仕組みに大きく左右されます。特に重要なのが以下の点です。

  1. 健康管理と過重労働防止の徹底
    時間管理の縛りがなくなる分、企業による丁寧なケアが必要です。定期的な面談や休暇取得状況のモニタリングが制度運用の肝となります。
  2. 成果の評価基準の明確化
    時間ではなく成果を評価する仕組みを整えないと、不透明感が残って従業員の不満につながります。KPIや目標管理の制度設計が欠かせません。
  3. 導入範囲・対象者の慎重な選定
    年収要件はもちろん、本人の自己管理能力や業務内容との適合性を見極めることが大切です。一部の職種で導入し、実績を踏まえて拡大するのが堅実な方法です。
  4. 風土・企業文化との相性
    実力主義や裁量性の高い文化が定着している企業であればスムーズに導入が進みます。一方で、年功序列や時間管理が前提の企業では、部署ごとに温度差が出る可能性があるため、事前の周知や説明が不可欠です。

まとめ

高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果を基準とした新しい働き方を可能にする制度です。高年収・高度専門職を対象に、企業と従業員双方にメリットがある一方で、制度の運用次第では長時間労働や健康被害などの問題を引き起こすリスクも抱えています。

制度導入を検討する企業は、対象業務や適用する従業員の慎重な選定、そして健康管理の仕組みをどのように設計・運用するかが鍵となります。実際に先行導入した企業の事例を参考にしつつ、自社の文化や働き方改革の方向性に合った形で制度を活用することが重要です。

日本の労働環境は急速に変化しており、高度プロフェッショナル制度以外にも裁量労働制やフレックスタイム制など、多様な制度が存在します。自社にマッチした仕組みを選び、従業員のモチベーションと健康を両立しながら生産性を高めることがこれからの企業の成長にとって不可欠と言えるでしょう。

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