「ややこしくて」という言葉は、「物事が煩雑で分かりにくい」「混乱させてしまうような状態になっている」という意味合いを含みます。日本語には「複雑」「紛らわしい」「わかりにくい」など、似た意味を持つ表現が数多く存在しますが、「ややこしい」はやや口語的で、くだけた印象も与える表現といえます。
ビジネスシーンで使用する際には、「わかりにくくて申し訳ございません」や「混乱させてしまい、申し訳ございません」といった、より丁寧な敬語表現に言い換えられる場合もあるでしょう。しかし、取引先や社内のやや近しい関係性であれば「ややこしくてすみません」でも失礼にはあたりません。むしろ、適度な柔らかさと親しみを感じさせることができる場面もあります。
目次
ビジネスシーンで具体的にどんなときに「ややこしくてすみません」と伝えるのが効果的でしょうか。たとえば、以下のようなケースが考えられます。
資料や説明が分かりにくいと感じられる場合
プレゼン資料や会議用ドキュメント、企画書などが複雑な構成になってしまい、相手が要点をつかみにくいとき。
「今回の仕様書が少々ややこしくてすみません。ご不明点があればいつでもお問い合わせください。」
発注内容や手配手順が複雑になり、混乱を招いた場合
複数の部署や取引先が関わる案件で手続きが煩雑になり、相手に余計な手間をかけさせてしまったとき。
「複数の書類が必要なので、ややこしくてすみませんが、順番にご確認いただけますでしょうか。」
スケジュール調整が難航してしまったとき
会議の日時や面談の予定などで、候補が多すぎたり急な変更が重なったりして相手を混乱させてしまうケース。
「何度も日程を調整していただき、ややこしくてすみません。助かります。」
メール上のやり取りで話が錯綜(さくそう)している状況
メールの文面が長くなったり、CCやBCCの関係者が増えすぎたりして、内容を整理しきれない場面。
「メールのやり取りが煩雑になってきましたね。ややこしくてすみませんが、改めて要点を整理いたします。」
いずれのケースでも、単に謝罪するだけでなく、相手が感じている「わかりにくさ」や「混乱」をしっかりと解決するフォローアクションを伝えることが重要です。「ややこしくてすみません」と述べた後に、「この後はわかりやすく整理します」「改めて手順をまとめます」「不明点はすぐに解消できるようサポートします」など、具体的な解決策を提示すると、誠意が伝わりやすいでしょう。
「ややこしくてすみません」と言う前に、そもそもなぜその状況が「ややこしい」と感じられるのかを把握してみましょう。相手が「どの部分」に混乱しているのか、あるいは自分が「どの部分」で整理しきれていないのかを分析することで、伝え方を改善できる可能性があります。資料の構成やメールの文章、口頭での説明など、コミュニケーション手段を見直すのも一つの方法です。
ビジネス用語の中には「クッション言葉」という、依頼や断り、謝罪などの場面で直接的な表現を和らげるフレーズがあります。たとえば、「恐れ入りますが」「恐縮ですが」「お手数をおかけしますが」などです。「ややこしくてすみません」にも、クッション言葉を組み合わせることで、さらに丁寧な印象を与えられます。
「大変恐れ入りますが、ややこしくてすみません。改めて説明をまとめさせていただきます。」
「ややこしくてすみません」だけでなく、似た意味を持つビジネス用語・ビジネスフレーズを使いこなせると、表現の幅が広がります。たとえば:
ビジネスシーンにおいては、単に「ややこしくてすみません」で終わりにすると、相手に「だから何なのか」「具体的にどう改善されるのか」が伝わりません。「ややこしくてすみません」と謝罪した後には、対策や改善策、次のステップを必ず提示しましょう。これはビジネスマナーの基本であり、問題解決型のコミュニケーションにも繋がります。
「ややこしくてすみません」は便利なフレーズですが、あまり頻繁に使いすぎると、相手に「この人はいつも物事を複雑化している」「資料作成や説明が苦手なのでは」といった印象を与えかねません。また、必要以上に頭を下げすぎると、自己評価が低いと思われたり、業務の効率に問題があると判断される可能性もあります。使うべき場面を見極め、必要なときだけ効果的に用いることが大切です。
社内の先輩・上司や取引先、お客様など、相手の立場によって敬語の度合いは変わってきます。フランクな関係性であれば「ややこしくてすみません」で十分ですが、公式な会議の場や目上の方には「ややこしい表現になってしまい、大変申し訳ございません」など、より丁寧な言葉に変えるのが無難でしょう。ビジネス用語としては敬意が感じられるかどうかが重要です。
メールやビジネスチャット(SlackやMicrosoft Teamsなど)において「ややこしくてすみません」と書く場合も、同様のルールを踏まえる必要があります。例えば短い文面の中でも、クッション言葉や敬語を適切に使い、最後にはフォローアップの一言を添えることで、相手に安心感や誠意を与えます。
件名:仕様書の追記について
〇〇様
お世話になっております。〇〇部の△△です。 先ほどお送りしました仕様書に追記事項が発生し、大変ややこしくてすみません。 追記部分をわかりやすくまとめたPDFを添付いたしましたので、ご一読いただければ幸いです。 他にもご不明点等ございましたら、遠慮なくご連絡ください。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
△△
ここでは、「ややこしくてすみません」と同様に、相手の混乱や不便さを気遣うフレーズをいくつか紹介します。ビジネスでよく使われる言い回しですので、合わせてマスターすると表現の幅が広がるでしょう。
「ご不便をおかけして申し訳ございません」
ややフォーマルな場面で用いられることが多いフレーズです。「不便」という単語を使って、相手が感じている手間や煩わしさに対して謝罪している点が特徴です。
「分かりづらい説明になってしまい、申し訳ございません」
自分の説明や資料が十分に整理されておらず、相手に混乱を与えてしまったときに適切なフレーズです。語尾の「~申し訳ございません」は、公式な場でも使いやすい敬語表現です。
「混同を招いてしまい、大変失礼いたしました」
類似する案件や複数のプロジェクトが同時に進んでいるとき、情報が入り乱れ混乱を招いてしまったときなどに使います。よりかしこまった印象を与えたいときに便利です。
「手続きが煩雑になり、恐れ入ります」
事務的な手続きや申請関連の説明にミスがあり、相手に追加の手間を取らせてしまった場合などに使われる表現です。「恐れ入ります」という言葉はクッション言葉としても定番です。
いずれのフレーズも、ただ謝罪するだけでなく、何が原因で相手に不便や混乱が生じたのかを明確にし、再発防止策や解決策を提示することがポイントです。「ややこしくてすみません」同様、「どの点がどうややこしいのか」「次はどうするのか」をセットで伝えると、より誠実かつプロフェッショナルな印象を与えるでしょう。
ここでは、ビジネスシーンを想定した会話やメールの例文を挙げます。それぞれの例文がどのように機能するのか、注目しながら読んでみてください。
上司
「この前の企画案だけど、詳しい流れが分かりにくいという声があったよ。もう少し整理できるかな?」
部下
「承知しました。わかりづらい点が多くてややこしくてすみません。改めて要点をまとめて、すぐに共有いたします。」
この場合、部下が「ややこしくてすみません」と伝えたうえで、「要点をまとめる」という改善策を即座に示しているのがポイントです。
〇〇株式会社
△△様
お世話になっております。××会社の□□です。 先日のご連絡にお返事が遅くなり、大変ややこしくてすみません。 こちらの内部手続きに時間がかかってしまっておりました。 詳細が決まり次第、改めてスケジュールをご報告いたしますので、 今しばらくお待ちいただけますと幸いです。 何卒よろしくお願いいたします。
□□
ここでは、手続きに時間がかかり、やり取りが複雑化したことで「ややこしくてすみません」と表現しています。理由もしっかり伝えたうえで、次のアクションである「スケジュール報告」を明確にしています。
担当者
「今回の契約内容なのですが、細かいオプションがいくつもあり、プランが重複している部分もあるようです。ややこしくてすみませんが、一度プランを再構成して見積もりをお出しします。」
取引先
「かしこまりました。整理ができたらまたご連絡ください。」
取引先との商談でプランが複雑になっている場合、謝罪の言葉と共に「再構成する」という解決策をセットで伝えています。
ビジネスシーンで「ややこしくてすみません」という謝罪が必要になる状況は、往々にして説明や資料の内容が複雑になっているケースです。問題は、単にややこしいこと自体よりも、相手が「理解しにくい」と感じてしまう点にあります。したがって、以下のようなポイントを押さえてわかりやすい説明を心がけることで、そもそもの「ややこしい」状況を回避または最小限に抑えられます。
結論を先に述べる
ビジネスメールや会議での発言、プレゼンなどで最初に結論を提示する「結論ファースト」を意識しましょう。相手は最初にゴールを知ることで、情報の受け取り方が変わり、理解がスムーズになります。
情報を適切に区分・整理する
資料や説明のポイントを整理し、セクションや箇条書きでわけるなど視覚的にも理解しやすい形にすると、ややこしさを大きく減らせます。段落の見出しや、太字・下線などを使うのも手です。
専門用語を噛み砕いて説明する
IT業界や医療、金融など、専門用語の多いビジネス領域ほど、相手がその専門知識を持たない場合は丁寧な噛み砕きが求められます。「ややこしくてすみません」と言わずに済むように、専門用語や略語を使うときは必ず補足説明を入れる習慣をつけましょう。
図表を活用する
文面や口頭だけでは伝わりにくい情報も、図表やグラフなどを使えば一目瞭然となることが少なくありません。ビジネスシーンではパワーポイント等のスライドやエクセルで簡易的に図解を示すことで、ややこしい問題をビジュアル化し、相手に理解しやすくする手法が有効です。
相手の理解度をこまめに確認する
長々と説明を続けるより、区切りごとに「ここまででご質問はありますか?」と確認するほうが、相手が途中で迷子にならないようにできます。これを怠ると、最終的に「ややこしくてすみません」という謝罪がセットになる可能性が高まります。
“Sorry for the confusion.”
相手に混乱を招いたことに対する一般的な謝罪。
“I apologize for the complication.”
状況や説明が複雑になってしまったことに対する謝罪。
“Sorry for making things complicated.”
自分の説明や対応で物事を複雑にしてしまった場合の謝罪。
“My apologies for any inconvenience caused.”
迷惑や不便をかけたことへの丁寧な謝罪表現。
“I’m sorry for the hassle.”
手間や煩雑さについて謝意を示すカジュアルな表現。
状況が複雑になる前に整理する姿勢が大事
「ややこしくてすみません」と謝罪する前に、できるだけわかりやすくまとめたり、混乱を防ぐ工夫を行いましょう。ビジネス用語やクッション言葉を適切に使うことで、相手への敬意や配慮も示すことができます。
謝罪とセットで解決策を提示する
ただ謝るだけでは相手の不安や不満は解消されません。謝罪と共に「次はどう改善するのか」「どのようにサポートできるのか」を具体的に示すことが重要です。
頻繁に使いすぎない
「ややこしくてすみません」の便利さに甘えず、状況をシンプルに保つ努力が信頼に繋がります。もし頻発してしまうようなら、自分の情報整理法やビジネスコミュニケーションの方法を見直す良い機会かもしれません。
相手に合わせた敬語・表現を選ぶ
取引先や上司、社外・社内など相手との距離感で表現を変える柔軟性が大切です。「ややこしくてすみません」を「ややこしくて申し訳ありません」「混乱を招いてしまい、大変申し訳ございません」に言い換えると、よりフォーマルになります。
ビジネス用語を適切に学び、引き出しを増やす
「ややこしくてすみません」以外にも、ビジネスシーンで役立つ言葉は多数存在します。様々な謝罪表現やクッション言葉、敬語表現を習得すれば、状況に応じて最適なフレーズを使い分けられるようになります。
「ややこしくてすみません」は、相手に混乱や手間をかけた場合の便利な謝罪表現ですが、乱用すると「整理が下手」という印象を与えかねません。ビジネスシーンでは、論理的で迅速な進行が評価されるため、謝罪とともに原因究明や再発防止策の提示が求められます。業務プロセスや情報整理の技術向上が、信頼獲得や生産性向上につながるでしょう。さらに、改善策を講じることで、相手への配慮と自己成長が実現し、より円滑なコミュニケーションを築くことができます。是非、日常業務の改善に努め、質の高いコミュニケーションを実現してください。