「できかねます」の意味・由来・使い方を徹底解説

最終更新日:2025年2月5日
Default Thumbnail

ビジネスの場では、自社・自分に不利な依頼や、どうしても応じられない要望が届くことがあります。そのようなシーンで、いかに相手に失礼なく、かつ適切な断りの意志を示すかはとても重要です。「できかねます」は、ビジネスメールや電話・対面での会話において、相手に対し丁寧に断りを伝える代表的なフレーズとして用いられます。

しかし、その表現が持つニュアンスを正しく理解せずに使ってしまうと、相手に冷たい印象を与えたり、失礼だと誤解される可能性もあります。そこで本記事では、「できかねます」の正しい意味や使い方、また注意点や代替表現までを総合的に紹介していきます。この記事を通じて、円滑なビジネスコミュニケーションを築くためのヒントを得ていただければ幸いです。

無料転職サービス診断!【全5問】
問1:年齢を選択してください。

「できかねます」の基本的な意味と由来

「できかねます」は、「するのが難しい」「対応が困難だ」という意味合いを、より丁寧かつ遠回しに表現した敬語です。「~かねる」という言葉は古語・文語的表現として「~することができない」という状態を表しており、「いたしかねる」「受けかねる」「承りかねる」など、同様の構造を持つ表現が数多く存在します。

  • できかねる
    「~するのが難しい」「~することを引き受けられない」という意味合いを持つ。そこに敬語要素の「ます」が付いた形が「できかねます」です。
  • 由来について
    「かねる」は、「兼ねる」や「金になる」などとは全く別の動詞として機能してきた表現の一つで、「~しようにもできない」「やむを得ずできない状況にある」というニュアンスを古くから含んでいます。ビジネス文書や手紙など正式な場で使用される敬語として定着しました。

このように、ビジネス文書やフォーマルな場でよく使われる「できかねます」ですが、日常会話で使われることはあまりありません。「できません」というストレートな言葉よりもやわらかな印象を与えますが、同時にやや堅苦しい敬語表現として受け止められることも多々あります。

「できかねます」を使用する意図とニュアンス

3-1. 丁重に断る・謝罪する意味合い

「できかねます」は、相手からの依頼や要望に対して引き受けることが難しい、もしくは実現できないことを丁重に伝える表現です。「残念ですが…」「あいにくですが…」などの言葉と組み合わせることで、相手の感情に配慮しつつ断ることができます。

  • 例:
    • 「大変申し訳ございませんが、そちらのご要望には対応いたしかねます。」
    • 「恐れ入りますが、私どもでは対応できかねますので、ご了承ください。」

3-2. 「できません」との違いは?

「できかねます」は「できません」の丁寧・遠回しなバージョンと捉えがちですが、実際には以下のような違いがあります。

  • できません
    カジュアルな表現。フランクに「無理です」と伝える。相手との距離が近く、上下関係が明確でない場面では使いやすいが、ビジネスの正式な文書や初対面の取引先にはやや失礼と感じられる場合がある。
  • できかねます
    相手への敬意を保ちつつ、「対応困難」であることを説明する表現。ビジネスメールや正式な場面で用いられることが多い。直接的な拒絶よりも、あくまで「事情があって難しい」というニュアンスが含まれるため、角が立ちにくいとされる。

このように、ビジネスシーンのフォーマル度合いによっては「できません」より「できかねます」を使う方が適切と考えられています。

具体的な使用例文

4-1. メールでの例文

納期の要望を断る場合

件名:納期短縮のご要望について ○○株式会社 □□部 △△様 いつもお世話になっております。▲▲株式会社の山田です。 先日は納期短縮のご要望をいただき、誠にありがとうございます。 大変恐縮ではございますが、現在の生産ラインの都合上、これ以上の納期短縮は対応できかねます。 何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ーーーーー ▲▲株式会社 営業部 山田太郎 TEL:03-1234-5678 E-mail:taro.yamada@xxxx.com ーーーーー

不可能な業務依頼を断る場合コピーする編集する件名:ご依頼件について ○○株式会社 営業部 △△様 いつも大変お世話になっております。▲▲株式会社の山田です。 このたびは弊社への業務依頼をご検討いただき、ありがとうございます。 誠に申し訳ございませんが、弊社では現在のリソースの関係上、いただいたご依頼の一部を担当いたしかねます。 他社様にて対応可能な領域かと存じますので、ご検討いただければ幸いです。 ご期待に添えず心苦しい限りではございますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。 ーーーーー ▲▲株式会社 山田太郎 ーーーーー

電話・対面での会話例

「恐れ入りますが、その点についてはこちらで対応しかねます。大変申し訳ございません。」

「あいにく担当部署の業務範囲外となっており、私どもでは対応いたしかねます。申し訳ございません。」

「誠に恐縮ですが、弊社ポリシーに反するため対応いたしかねます。ご理解いただければ幸いです。」

電話や対面で伝える場合は、声のトーンや言い方も重要です。フラットに伝えてしまうと冷たく感じられる恐れがあるため、申し訳ないという気持ちを込めて柔らかく話すようにしましょう。

類似表現と違い・使い分け

5-1. 「いたしかねます」

「いたしかねます」も「できかねます」とほぼ同等の意味を持つ敬語表現です。「いたす」という謙譲語と「かねる」が合わさった形で、「私が(私どもが)~することができない」の意味になります。「できかねます」よりもさらに丁寧な印象を与えるケースが多いです。

  • 例:
    • 「申し訳ございませんが、その点につきましては承りかねます。」
    • 「大変恐縮ではございますが、私どもではいたしかねます。」

5-2. 「難しいです/厳しいです」

「難しいです」や「厳しいです」はビジネスシーンでも使われる表現ですが、敬語としてはややカジュアルに響きます。取引先や上司など、相手にしっかりと礼を尽くしたい場合には「できかねます」の方が望ましい場合が多いです。しかし、相手との関係や場面によっては「難しいです」「厳しいです」の方が率直でわかりやすいこともあります。

5-3. 「ご要望に添いかねます」

「要望に添う=要望をかなえる」ことができない場合に使われる定型表現です。メールなどのビジネス文書においては「ご要望に添いかねます」「ご期待に添いかねます」という形で、礼儀正しく断りを入れるときに頻出します。

「できかねます」の失礼にならない使い方

「できかねます」は、やや硬めの印象を与える敬語表現であるため、状況によっては「冷たい」「融通が利かない」といったイメージを抱かれないように気を配る必要があります。以下のポイントを押さえておけば、失礼な印象を与えずに活用できます。

  1. クッション言葉を添える
    • 「恐れ入りますが…」「大変申し訳ございませんが…」
    • 「残念ながら…」「あいにくではございますが…」
      これらの言葉を先に置くことで、断りの表現を柔らかくする効果が期待できます。
  2. 理由を簡潔に説明する
    • 例:「弊社の業務範囲外となっており…」「システム上の制約がございますので…」
      理由を伝えることで相手の納得感を高められます。ただし、理由が機密情報やネガティブすぎる内容の場合は、一部を伏せたり表現を調整したりして配慮が必要です。
  3. 別の提案や代替案を提示する
    • 「恐縮ですが、代わりにこちらのサービスをご検討いただけますと幸いです。」
    • 「他部署をご紹介いたしますので、もしご興味があればご連絡ください。」
      単に断るだけでなく、別の選択肢や解決策を提示することで、相手に対して誠実な姿勢を示せます。

「できかねます」を使う際に注意すべきこと

7-1. 違和感のある重言・重複表現

「申し訳ございませんが、~できかねます」という表現と「申し訳ございませんが、~いたしかねます」を繰り返し使いすぎると単調に感じられたり、くどい印象を与えたりします。相手に敬意を伝えるための表現は、バリエーションをもたせることが肝心です。

  • 「大変恐れ入りますが…」
  • 「恐縮ではございますが…」
  • 「あいにくではございますが…」

などのクッション言葉を交えながら、丁寧すぎる表現になりすぎないよう適度に調節しましょう。

7-2. 相手の感情を損ねない工夫

断りを入れられる側は、どうしてもネガティブな感情を抱きやすいものです。ビジネスで断りを入れる際には、相手の立場・都合を十分に配慮していることが伝わるようにしましょう。そのためにも、謝意感謝の気持ちを伝えるフレーズを先に入れておくと効果的です。

  • 「いつもご利用いただきありがとうございます。」
  • 「今回のご相談をいただき感謝しております。」

このように前置きで相手を肯定し、その上で苦渋の選択として「できかねます」を使用すると、相手の理解を得やすくなります。

ポジティブな要素を含めた上手な断り方

「断り」という行為自体はネガティブなものですが、相手を配慮しつつ、可能な限りポジティブな要素を盛り込むと、コミュニケーションとしては良好になります。たとえば以下のような工夫があります。

  • 相手のメリットになる情報を付け加える
    • 「当社では対応しかねますが、◯◯社様ならきっとご期待に添えるかと思います。」
    • 「弊社サービスではカバーが難しいかもしれませんが、□□のサービスならご要望に近い機能がご利用いただけます。」
  • 次に繋がる関係を保つ言葉を入れる
    • 「今回は力及ばず申し訳ありませんが、今後何かありましたらぜひご相談いただければ幸いです。」
    • 「また別の機会に何かお手伝いができましたら、ぜひご連絡ください。」

断るだけでなく、相手の課題を解決するための代案や提案を示すことで、相手にとって「またこの人に相談してみたい」と思ってもらえる可能性が高まります。

謝罪表現との組み合わせ方

「できかねます」は断りの表現なので、同時に謝罪の意を伝えるのは基本と言えます。ビジネスシーンでよく使われる謝罪表現には以下のようなものがあります。

  • 申し訳ございません
    非常に一般的であり、真摯さを伝えやすい表現。
  • 恐れ入ります
    相手に手間を取らせたり、不快な思いをさせたりすることに対する恐縮の思いを示す言葉。

組み合わせ例:

  • 「申し訳ございませんが、こちらでは対応いたしかねます。」
  • 「大変恐れ入りますが、現在の状況ではご要望にお応えしかねます。」

このように、謝罪表現をうまく加えることで、断りの冷たさを和らげることができます。

海外とのやり取りでの注意点(和訳・英訳のニュアンス)

「できかねます」をそのまま英語に直訳すると、「We are not able to do that.」や「We cannot fulfill your request.」といった形になりますが、英語のビジネスメールで断る場合、日本語の「できかねます」ほどの丁寧なニュアンスは伝わりにくいかもしれません。丁寧に断るのであれば、以下のように表現するのが一般的です。

  • 英語の例
    • “We regret to inform you that we are unable to accommodate your request under the current circumstances.”
    • “Unfortunately, we are not in a position to proceed with your request at this time.”

また、海外のビジネスシーンでは日本ほど礼儀表現のバリエーションは多くないため、適度にシンプルな表現で伝えつつ、相手が理解しやすい理由を添えることが大切です。

「できかねます」のビジネスシーン別活用事例

  1. 社内の稟議申請を断る場合
    • 「大変申し訳ございません。予算上の制約があり、今回のご提案を承認しかねます。」
  2. 顧客からの無理な値下げ交渉を断る場合
    • 「誠に恐縮ですが、現在の原価や市場価格を踏まえまして、これ以上の値下げは対応いたしかねます。」
  3. システム不具合の原因調査を依頼されたが範囲外の場合
    • 「恐れ入りますが、当システムの保守対象外となっており、こちらでは原因究明を行いかねます。該当部署をご紹介いたしましょうか?」
  4. 社外イベントへの協賛要請を断る場合
    • 「素晴らしい趣旨のイベントだと存じますが、予算都合により協賛は難しく、今回は協力いたしかねます。もし別の形でご協力できることがありましたらご相談ください。」

こうした例を踏まえると、「できかねます」は単なる断り文句としてだけでなく、相手をできる限りサポートしようとする姿勢を同時に示す形で使うのがベストといえます。

まとめ

「できかねます」はビジネスにおいて丁寧に断るための定番フレーズですが、その丁寧さゆえに正しく理解・活用しないと冷たく感じられたり、相手を不快にさせてしまったりする可能性があります。以下のポイントを押さえて、適切に使いこなしましょう。

  1. 意味とニュアンスを理解する
    • 「できません」よりもフォーマル、かつ柔らかい表現であると同時に、直接的な拒絶に近いニュアンスが含まれることを理解しておく。
  2. クッション言葉とセットで使う
    • 「恐れ入りますが…」「大変申し訳ございませんが…」などと組み合わせることで、断りの印象がやわらかくなる。
  3. 理由と代案を添えて伝える
    • なぜ対応できないのかを簡潔に示し、さらに代替案や提案を用意することで、相手の満足度や納得感を高める。
  4. 状況・相手に応じた表現を選ぶ
    • 「いたしかねます」「ご要望に添えかねます」などの類似表現を状況に合わせて使い分ける。
    • カジュアルな場面や気心の知れた相手なら「難しいです」や「厳しいです」とする選択肢もあり。
  5. 相手との関係を大切にする
    • 断るときこそ誠意が求められる。相手の立場に配慮した表現を用い、今後の良好な関係構築につなげる。

ビジネスでは一度のやり取りが大きな評価に直結する場合もあります。特に「断り」の場面では、相手に配慮した行動言葉遣いこそが信頼を築く土台となります。ぜひ本記事で学んだことを活用し、ビジネスシーンで「できかねます」を効果的に使ってみてください。相手を思いやりながらも、しっかりと自分や自社の立場を守ることができる表現として、「できかねます」は非常に有用です。

断りを入れることは誰しもが気を遣うシーンですが、「できかねます」というフレーズをうまく使いこなし、相手にも自分にもメリットのあるコミュニケーションを図っていきましょう。

\ 収入アップ!あなたにピッタリの仕事を見つけよう /
無料転職サービス診断!【全5問】
問1:年齢を選択してください。