ビジネスシーンでは上司や取引先、顧客など、さまざまな相手とのやりとりが発生します。
その中で欠かせないのが敬語を正しく使うことです。特に、「承知いたしました」は「相手の依頼やお願い、情報を理解し、受け止めた」と示す代表的な敬語表現として、多くの社会人が日常的に使用しています。
一方で、「了解しました」「かしこまりました」などの似た表現との違いが曖昧だったり、誤用によって相手に違和感を与えてしまうケースもあります。本記事では、正しい意味や使い方のポイントを押さえつつ、より実践的に役立つ例文を紹介していきます。
目次
「承知いたしました」は、「承知する」を謙譲語で表現した丁寧な言い回しです。具体的には
相手の言った内容をしっかり理解し、受け止めました
という意味合いを伝えます。
「承知」は「わかる」「引き受ける」というニュアンスを含み、そこに「いたしました」を加えることで、へりくだった表現になっています。
つまり、「承知いたしました」は自分の受けた行為(承知)を謙って言及している形と捉えられます。
ビジネスメールや会話でよく目にする「承知しました」と「承知いたしました」。これらは大きく意味が変わるわけではありません。ただし、丁寧さや敬意の度合いに微妙な差があります。
同じ場面で使っても誤りというわけではありませんが、より丁寧さをアピールしたい場合には「承知いたしました」が無難です。
上司や先輩から仕事を依頼されたり、指示を受けたりした際に、「承知いたしました」は使いやすいフレーズです。
例文
ビジネス外部の関係者、特に取引先や顧客などへは、社内以上に丁寧さが求められます。「承知いたしました」は文書・口頭どちらでも好印象を与えやすい表現です。
例文
電話応対やクレーム対応では、相手に安心感を与えることが重要です。相手の要望や不満を受け止めつつ、丁寧に対応する姿勢を示すために「承知いたしました」を使う場面がよくあります。
例文
依頼や指示を受けた際、まずは理解したことを明確にするためにも「承知いたしました」を使います。
txtコピーする編集する件名:【ご依頼承知いたしました】〇〇の件について
〇〇株式会社 △△様
いつもお世話になっております。□□会社の■■です。
先ほどご連絡いただきました〇〇の件、承知いたしました。
迅速に対応し、〇月〇日までに結果をご報告いたします。
何か追加でご要望やご不明点などございましたら、お気軽にご連絡ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
□□会社 ■■
日程の調整やスケジュール連絡をする場合にも、相手の要望を受け止める表現として使えます。
txtコピーする編集する○○様
ご連絡ありがとうございます。
ご提案いただきました日程(〇月〇日 10時~)で承知いたしました。
当日はA会議室にてお待ちしております。
何か変更等ございましたら、お早めにお知らせくださいますようお願いいたします。
メールを転送したり、情報を共有する際にも、自分が理解・確認したことを相手に伝える一文として役立ちます。
txtコピーする編集する◯◯部長
先ほど受信しました○○様からのご依頼内容、承知いたしました。
必要箇所をまとめたうえで再度ご連絡いたします。
取り急ぎご報告まで、どうぞよろしくお願いいたします。
「承知いたしました」と同じシチュエーションで使われることの多い類語を比較します。
表現 | 意味・ニュアンス | 使用場面 |
---|---|---|
かしこまりました | 「かしこまる」の丁寧語。接客業やホテルなどで定番の上品な印象 | 店舗での接客シーンや、ホテル、レストランなど、お客様対応がメインの場面 |
承りました | 「承る(うけたまわる)」を謙譲語で用いた形。 「聞く・受ける」の意味を含む | 電話応対や受付業務など、相手の要望を聞いたことをシンプルに伝える際に適している |
了解しました | 「了解する」を丁寧に言ったものだが、敬意の度合いは低め | 社内や近しい取引先など、ある程度フランクな関係性の間で使用することが多い |
承知しました | 「承知する」の丁寧語。 「承知いたしました」より若干カジュアル | 社内外を問わず使えるが、より柔らかさや丁寧度を示したいときは「承知いたしました」が便利 |
選び方のポイント
「承知いたしました」はとても便利なフレーズであるため、つい繰り返し使いがちです。しかし、文章や会話で連呼しすぎると、機械的・定型文的な印象を与える恐れがあります。
対策
取引先や顧客とはいえ、比較的フランクな付き合いがある場合や、長年のビジネスパートナーの場合などは、「承知いたしました」が逆に堅すぎると感じさせることもあります。相手がどんな敬語表現を好むか、コミュニケーションのトーンを見極めることも重要です。
ビジネスシーンで「了解しました」を使うこと自体は間違いではありませんが、「承知いたしました」に比べるとやや軽い表現です。特に、上位者や年配の方に向けて使うと失礼に当たる場合もあります。社内の同僚や後輩など、フラットな関係であれば問題ないでしょう。
ビジネス敬語では、相手が「どう感じるか」を第一に考える必要があります。
→ ポイント
「承知いたしました」自体は二重敬語ではありませんが、他のフレーズとの組み合わせによっては誤用が起こることも。
ビジネス文書や敬語表現のテンプレートは非常に便利ですが、そればかりに頼っていると画一的な印象を与えてしまいがちです。相手の業種・状況・要望などを踏まえ、柔軟にアレンジすることを心がけましょう。
Q1.「了解しました」と「了承しました」は上司に使ってもいい?
A. どちらも意味合い的には「分かりました」ですが、敬意のレベルが若干低いため、目上の方には「承知いたしました」などの方が好ましいです。相手や社風によっては「了解しました」でも問題ない場合もありますが、まずは無難な表現を選ぶ方が良いでしょう。
Q2.「かしこまりました」と「承知いたしました」の使い分けは?
A. 接客業や店舗ビジネスでは「かしこまりました」が自然で上品な印象を与えます。一般的なオフィス業務や取引先とのやりとりであれば「承知いたしました」が一般的です。
Q3. 何度も「承知いたしました」を使うのはおかしいでしょうか?
A. 短い文章に同じ敬語表現を連発すると、少し単調になる可能性があります。たとえば「承知いたしました」「かしこまりました」「承知しております」など、意図的にバリエーションをもたせると読みやすくなります。
Q4. 「承知いたしました」の英語表現は?
A. 厳密な英訳は難しいですが、ビジネス英語では「I understand.」や「Certainly.」などがよく使われます。日本語ほど細かい敬語の段階がないため、やりとりの文脈に合わせて適宜使い分けるのがポイントです。
「承知いたしました」は、相手の要望をしっかり受け止めたことを伝えられるうえに、ビジネスシーン全般で通用する便利な敬語表現です。
上司や取引先など、さまざまな相手に配慮したコミュニケーションを行うためにも、まずは正しい意味と使い方を理解し、状況に応じて柔軟に言葉を選びましょう。適切な敬語表現を身につけることで、ビジネスコミュニケーション全体の質が向上し、相手からの信頼も得やすくなります。