ビジネスシーンでは日々、大小さまざまな意思決定を伴う業務が発生します。会議や商談で即断即決が求められる一方で、関係者の意見を調整したり、複数の選択肢を検討したりする過程で「決めかねる」状況に陥ることもしばしばです。
「決めかねる」は一見、ただ「迷っている」ことを表すだけの言葉に思えますが、ビジネスシーンにおいては微妙なニュアンスや適切な使い方が存在します。そこで本記事では、
などを徹底解説し、あなたがビジネスで円滑にコミュニケーションを図るための手助けをします。最後までお読みいただき、「決めかねる」を上手に扱えるようになりましょう。
目次
「決めかねる」は「決める」と否定や難しさを表す「かねる」という語が組み合わさった表現です。この「かねる」は古語的な要素を含んでおり、「…するのが難しい」「…できない」というニュアンスを持っています。つまり、「決めかねる」とは「決断することができない」「判断に迷っている」という状態を意味する言葉です。
「決める」と「かねる」が合わさることで、「自分の中で結論を出せず、判断が難しい」という意味合いが生まれます。ビジネスでは、すぐに判断できないシチュエーションや各種調整が必要な場面で多用されやすい表現です。
ビジネスシーンにおける日本語表現は、直接的な言い方よりも婉曲表現が好まれる場面が多々あります。「決めかねる」は「どうしようか迷っている」や「判断できない」という直接的な言葉よりも、少し柔らかい印象を与えます。相手に「優柔不断だ」という印象を与えすぎない一方で、結論を保留している事実はきちんと伝えられるため、上手に使えばコミュニケーションを円滑にする効果が期待できます。
ビジネスでは、チーム内の合意形成や上司への稟議、クライアントへの提案など多くのプロセスを経て最終決定に至ります。そんな中で、「決めかねる」状況に陥る具体的な事例を以下でご紹介します。
会議が進む中で「複数の案が出ているが、どれも一長一短がある」「費用対効果を計算したいがデータが不足している」など、結論を出しづらい時に「決めかねる」状態となります。このような場合、結論を急いで間違いを犯すより、保留のまま追加情報を収集したほうが良いことも少なくありません。無理に決めて後悔するリスクを避けるためにも、検討時間を確保する旨を上手に伝える必要があるでしょう。
クライアントに対し、新しいサービスや製品の提案を行う際、提案者側も相手のニーズを十分把握しきれなかったり、条件や予算のすり合わせがまだ不十分だったりする場合、最終的な契約締結に対して「決めかねる」局面が生じがちです。もちろん営業サイドとしては結論を急ぎたいところですが、無理に押し通すと関係性悪化やクレームの原因となるおそれもあります。
「社員の昇格」や「プロジェクトメンバーの選定」など、人にまつわる重要な意思決定の場面では、業績評価やスキルを総合的に判断しても結論が出しづらいことが多々あります。このような状況下で「決めかねる」状態が続くと、関係者のモチベーション低下を招く可能性があります。そのため、必要な情報を整理し、素早く解決策を見出すスキルもまた求められます。
ビジネスメールや口頭で「決めかねる」と表現する際は、相手の立場や状況を考慮した言い回しが大切です。安易に乱用すると「優柔不断」という印象を与えてしまうおそれがあるため、以下のポイントに注意しましょう。
社内会議での一言
取引先へのビジネスメール
これらの例では、「決めかねる」状態をただ相手に伝えるだけでなく、次にどう行動すれば良いか(追加データの収集、検討時間の確保、今後の進め方)を明確に示すことが大切です。「決めかねる」という言葉だけを伝えると消極的な印象を与えがちですが、合わせて行動プランを添えることで、前向きに検討している姿勢を示すことができます。
ビジネスシーンでは丁寧な言い回しが求められます。「決めかねる」という言葉を用いる際は敬語や謙譲語などとの相性に注意してください。
など、相手との上下関係によって適宜調整することがポイントです。より柔らかく伝えたい場合は、「少々判断しかねる部分がございます」「いましばらく検討させてください」など、さらに婉曲に表現することも可能でしょう。
「決めかねる」を頻繁に使いすぎると、周囲から「いつも決断できない人」という印象を与える可能性があります。結果としてリーダーシップが不足していると見なされ、評価に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。ビジネスにおいては適切なタイミングで決断を下すことが求められますので、本当に「判断材料が足りない」「今は最終結論を出すべきでない」と感じるときにのみ使うようにしましょう。
ビジネス日本語には「決めかねる」と似たような意味合いで使われる表現がいくつかあります。それぞれのニュアンスや使い方の違いを把握することで、より正確なコミュニケーションが可能です。
「迷う」は会話調でカジュアルに用いられることが多いですが、「決めかねる」は改まった場や文書でも失礼になりにくいので、ビジネス文書にはこちらが適しています。ただし、友人同士の会話で「決めかねる」というと、少し大げさな響きになることがあります。
「検討しています」と言うと、まだ結論は先というニュアンスを含みながらも、前向きに調べたり議論したりしている印象が強いです。一方、「決めかねる」は、「検討した結果、まだ結論を出せない」という状況をやや消極的に表す言葉になります。相手が「積極的に動いているかどうか」を気にしているのであれば、「検討」を使う方がポジティブな印象を与える場合も多いでしょう。
「保留する」は意思決定を積極的に先送りにするニュアンスが含まれます。「決めかねる」は主に心理的・客観的要因で結論に至らない状況を指しますが、「保留する」は意図的に結論を先延ばししているようにも受け取られがちです。ビジネスの文脈で「保留」ばかり多用すると「先延ばし体質」という印象を与えかねないため、使う場面に注意が必要です。
ビジネスでは、決められない状態が長引くとプロジェクトの遅延や取引先との関係悪化に繋がりかねません。以下のヒントを参考に、「決めかねる」状態を最小限に抑えましょう。
「決めかねる」原因の一つに「判断材料の不足」が挙げられます。自社データだけでなく、取引先や競合他社の事例、関連する法令や市場動向など、幅広い角度から情報を入手することで、決断に必要な要素を補いましょう。情報が揃えば揃うほど、判断ミスのリスクは下がり、チームや上司に対しても説得力のある提案が可能になります。
複数の選択肢がある場合、各案のメリットとデメリットを定量的・定性的に比較することが有効です。表やリストを使って可視化し、判断基準を明確にすると「決めかねる」状態から脱却しやすくなります。特に予算・スケジュール・リスクヘッジといった観点で整理することで、より正確な意思決定が可能になるでしょう。
自分一人で悩み続けるよりも、チームメンバーや上司、時には社外の専門家の助言を得ることで、新たな視点が得られる場合が多いです。自分が気づかなかったリスクや、思いもよらないチャンスが見つかることもあります。「決めかねる」と感じたら、一人で抱え込まず周囲に相談する習慣をつけると、スムーズに結論を導き出せるでしょう。
ビジネスではスピードが求められがちですが、情報不十分な状態での拙速な決断は取り返しのつかない結果を招く可能性があります。あえて結論を出さず、追加情報が集まるのを待つ方が良いケースも少なくありません。もちろん「決めかねる」状態が長引くのは望ましくありませんが、必要な猶予を確保するのも重要な戦略です。
ビジネスコミュニケーションは「適切な言葉を、適切な状況で使う」ことが大切です。「決めかねる」は保留の姿勢をやや柔らかく伝える便利な言い回しですが、それ単体で終わらず、相手に安心感を持ってもらえるような説明や今後の対処方針を提示することが鍵となります。
背景と理由の説明
「なぜ、いま決めかねているのか」を明確に示すことで、相手から無駄な不信感を抱かれずに済みます。たとえば「想定以上のコストがかかる可能性を再検討している」「法務部門の許認可が必要で確認中である」など、納得感のある理由を伝えることが大切です。
スケジュールの提示
ビジネスでは時間管理が重要です。「決めかねる」状態で放置してしまうと相手の予定にも影響します。いつまでに結論を出せるのか、次のアクションは何か、具体的なタイムラインを提示するだけで、相手が感じる不安を和らげることができます。
リスクヘッジプランの提案
「決めかねる」原因がリスクに対する懸念である場合は、そのリスクをいかに低減できるかを一緒に考えましょう。「もしA案が失敗した際にはB案を適用する」など代替策を示すことで、関係者の説得材料を増やし、決断に近づける効果があります。
「決めかねる」とは、「決める」と「かねる」が組み合わさった表現で、判断や結論を出せない状態を意味します。古語的な風味があり、ビジネスシーンでは会議や商談、人事評価など、結論を柔らかく保留する際に使われます。同様の意味を持つ「迷う」や「検討する」とは異なり、保留感が強い表現です。ただし、単に「決めかねる」と言うだけでは不十分で、理由や今後の対応、回答予定時期なども併せて伝える必要があります。多用すると優柔不断や逃げと捉えられるリスクもありますが、十分な情報収集やメリット・デメリットの整理、関係者との相談を経た上で使用すれば、適切な判断のための時間調整や慎重な意思決定を示すポジティブな表現となります。