ビジネスシーンでやり取りをする際、突然相手に確認したいことが発生する場面は少なくありません。特に、会話の流れとは少し異なる内容を切り出して質問したいときや、直接本題とはあまり関係のない事柄を聞きたいときには、なかなか切り出し方に悩むものです。そうした場面でよく用いられる言葉の一つが「つかぬことをお聞きしますが」というフレーズです。
この記事では、「つかぬことをお聞きしますが」という表現の意味や使い方、使用する際の注意点などを詳しく解説いたします。ビジネス用語としてどのように扱うべきか、また類似表現や言い換えの例もあわせて取り上げますので、普段のコミュニケーションで活用していただければ幸いです。
目次
「つかぬことをお聞きしますが」というフレーズは、もともと「つかぬこと」という表現から成り立っています。「つかぬ」とは「突き抜ける」や「思いがけない・不意に」という意味合いに近く、前後の文脈や話題の流れから逸脱してしまうような質問を行う際に使われる言葉です。つまり「突然ではございますが」「急に話題が変わりますが」というニュアンスを含んでいます。
ビジネスシーンでは、「当初のトピック・議題から離れた質問をしたい」「いきなり別件を挟む」というときに、相手に対して失礼がないようにクッション言葉として機能します。自分の都合で不意に話を変えることは相手を戸惑わせる場合がありますが、あらかじめ「話題が変わる」という意思表示を丁寧に行うことで、よりスムーズなコミュニケーションを図ることができるのです。
ビジネスの現場では、会議や打ち合わせ、メールやチャットなど、コミュニケーションをとる場面で多岐にわたって「つかぬことをお聞きしますが」が利用されています。例えば、商品の価格交渉の話をしている最中に、ふと契約書の細則について確認したい場合や、相手企業の業績や実績に関する情報を教えてほしいという場合など、流れを中断して補足的な質問をする際に有効です。
ただし、あまりに頻繁に「つかぬことを~」と持ち出すと、逆にわざとらしく聞こえたり、質問の仕方が型通りすぎる印象を与えてしまうこともあります。どのような場面で使うか、その適切さや頻度に気を配ることが大切です。
「つかぬことをお聞きしますが」は大変便利なフレーズですが、使用する上でいくつか押さえておくべきポイントがあります。スムーズかつ失礼のない印象を与えるために、以下の点に注意すると良いでしょう。
「つかぬことをお聞きしますが」は、自分が相手の話題を中断する形で質問をする際に使われる表現です。以下のような状況であれば、自然に使用できます。
これらの状況において「突然で恐縮ですが」「少し本題と離れますが」といった表現を用いてから質問に入ることで、相手に不快感を与えずに済みます。一方、すでに本題から派生して自然に話が展開している場合や、別件であることが明らかな場合には「つかぬことをお聞きしますが」を省略して質問するほうがスムーズに聞こえるケースもあります。
「つかぬことをお聞きしますが」の後に続く文章は、質問の主旨を簡潔にまとめたものが望ましいです。たとえば、
つかぬことをお聞きしますが、貴社の最新の製品ラインナップについてもう少し詳しい情報をお伺いできますでしょうか?
のように、相手が明確に答えられる形式で要点を伝えましょう。質問が長くなりすぎたり、曖昧になってしまうと、せっかく前置きを入れても「何を聞きたいのかわからない」という印象を与えてしまいます。先にクッション言葉を置きつつ、質問内容を端的に伝えるのがコツです。
「つかぬことをお聞きしますが」というフレーズ自体は、すでに相手を思いやる丁寧なクッション言葉です。とはいえ、その後に続く文章でも、ビジネスの場では敬語や丁寧語をしっかり使うことが重要です。相手の立場や役職を踏まえつつ、「~ください」よりも「~いただけますでしょうか」のような表現を用いると、より丁寧で柔らかい印象を与えられます。
また、場合によっては「お手数をおかけしますが」「ご迷惑でなければ」といったさらなるクッションを挟み込むことも検討しましょう。相手が忙しい可能性や、すでに案件が立て込んでいる可能性を考慮して、「急ぎではございませんが、ご回答いただけると幸いです」と補足するなど、配慮の姿勢を示すことも大切です。
ここでは「つかぬことをお聞きしますが」の具体例をいくつか挙げます。実際のビジネスシーンを想定し、自然な形で活用するイメージをつかんでみてください。
つかぬことをお聞きしますが、今回のプロジェクトに関連する新しい予算案は、どのように進める予定でしょうか?
つかぬことをお聞きしますが、先日お送りいただいたデータの詳細について、もう少しご説明いただけませんでしょうか?
つかぬことをお聞きしますが、もし可能であれば来月のご都合をお伺いしてもよろしいでしょうか。
いずれも、直接の議題や話題とはややズレがある質問を、唐突に持ち出す前にワンクッション置くためのフレーズとして活用されています。
「つかぬことをお聞きしますが」は、口頭だけでなくメールや文章の中でも頻繁に使用されます。書き言葉としてはやや硬い印象を与えることもあるため、状況に応じて以下の点を押さえると良いでしょう。
前置きを簡潔にする
長いメール文面の中で「つかぬことをお聞きしますが」から長文を続けると、読み手が負担を感じる場合があります。質問はできるだけ一文や二文程度に収め、用件を明確にするよう心がけましょう。
要件を最初に提示する
ビジネスメールでは、結論や要件を冒頭部分に書くのが基本です。つまり「突然のお願いで恐縮ですが、本日はAに関してお伺いしたく連絡いたしました。」などのように、最初の段階で相手に自分の目的を伝えるほうが親切です。
フォーマル度合いに応じて言い換えを検討
堅めの文章が求められる場合は「恐れ入りますが、少々別件を伺ってもよろしいでしょうか」といった別のクッション言葉を使うのも手です。同じフレーズを繰り返し使うよりも、文面のニュアンスに合わせてバリエーションを持たせたほうが、相手にも読みやすく感じてもらえるでしょう。
「つかぬことをお聞きしますが」というフレーズには、他にも近しい意味合いを持つ言い回しがいくつか存在します。シーンや相手、文章のトーンによって使い分けることで、より豊かな表現を実現することができるでしょう。
突然話題を変えたり、思いがけないお願いをする際に使われます。「つかぬことをお聞きしますが」と同じく、クッション言葉の役割を果たします。
カジュアルな場面でも使用可能で、口頭での会話では比較的よく耳にする表現です。ビジネスメールでは少し砕けた印象を与えるかもしれません。
会議や討議などで発言するときに役立ちます。相手への配慮とともに、自分が話題を変えることを明確に宣言することで、混乱を招かずに進行できます。
書き言葉やプレゼン資料などで見られる表現です。より硬い印象を出したいときに適しています。
いずれの表現も、「今から別のことを話す・聞く」という意図を示すクッションとして機能します。場面に応じて言い換えを上手に取り入れ、自分の言葉の幅を広げておくと、コミュニケーションがスムーズに進みやすくなります。
「つかぬことをお聞きしますが」は非常に便利な表現ですが、多用しすぎると以下のようなリスクが発生することもあります。
わざとらしさや形だけの丁寧さが目立つ
何度も繰り返し使われると、「この人は形式的に丁寧な言葉を並べているだけではないか」と受け取られる場合があります。相手との距離感や親密度、コミュニケーションの頻度を踏まえ、必要なときにだけ使うようにしましょう。
文章がくどくなる
長文の中で何度もクッション言葉を挟むと、「読みづらい」「要点がわからない」といった印象を持たれやすくなります。重要なのは質問そのものの内容や具体性ですので、簡潔かつ明瞭に伝えることを心がけましょう。
事前に聞くべき内容や準備が不足していたと見なされる
毎回「つかぬことを~」で補足的な質問ばかりしていると、会議前やメール送信前の準備不足を疑われることもあります。本当に「急に思いついた」質問なら問題ありませんが、事前に確認できることはなるべく事前に確認しておくのがビジネスマナーです。
以下に、実際のビジネスメールを想定した文例を示します。あくまで一例ですが、参考になれば幸いです。
株式会社〇〇
営業部 △△様
いつも大変お世話になっております。
株式会社□□の××です。
先日はお忙しい中、ミーティングのお時間をいただきありがとうございました。
次回のミーティングにつきましては、3月10日(水)の午後14時より1時間ほどお時間を頂戴したいと考えておりますが、△△様のご都合はいかがでしょうか。もしご都合が悪い場合は、別の候補日をお知らせいただけますと幸いです。
また、つかぬことをお聞きしますが、先日送付いただいた資料の中に記載されていた数値について、一点補足情報をいただけますでしょうか。具体的には、売上推移グラフの2ページ目にある「2024年度Q2実績」の数値が、前回いただいた資料の数値と異なるように見受けられました。お手数をおかけいたしますが、実際の確定数値や更新時期などについて教えていただけましたら助かります。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
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株式会社□□
営業企画部 ××
住所:〒123-4567 東京都〇〇区△△1-2-3
TEL:03-1234-5678
MAIL:xxxx@company.jp
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上記の例のように、「つかぬことをお聞きしますが」を使うことで、主たる依頼(次回ミーティング日程の確認)とは別の件(データの補足確認)をスムーズに切り出すことができます。急に話題が変わる印象を和らげるためにも、一文挟むだけで相手に対する配慮を示せるのです。
「つかぬことをお聞きしますが」は、急な話題転換や予期せぬ質問の際に、相手に失礼な印象を与えず、丁寧なコミュニケーションを図るための前置き表現です。会議やメールなどのビジネスシーンで用いることで、質問内容を明確にしつつ、唐突さを和らげ、円滑な対話を促します。ただし、過度な使用は形式的になりがちなので、他の敬語表現と組み合わせるなどバリエーションを持たせることが望まれます。