「ご協力の程よろしくお願いいたします」は、日本語のビジネスシーンで頻繁に使われる挨拶や依頼のフレーズです。「ご協力」という言葉からも分かるように、相手にサポートや協力を仰ぐ際に使われます。また「~の程よろしくお願いいたします」という表現は、「何卒よろしくお願いします」「ご理解のほどよろしくお願いします」など多様なバリエーションがありますが、いずれも相手に対してへりくだりつつ、協力や理解などのアクションをお願いするニュアンスを含んでいます。ビジネスメールや会議、電話など幅広い場面で活用される基本表現でありながら、言葉の意味や適切な使い方を正確に把握していない人も少なくありません。
「ご協力の程よろしくお願いいたします」は、おもに下記のような意味を含みます。
ビジネス文書やメールなどの書き言葉においては、大変便利かつ丁寧な定型表現です。一方で、「いつ」「どんなシーンで使うか」によっては相手に伝わらない場合もあるため、使う際は状況や相手の立場を考慮する必要があります。
目次
プロジェクトの資料作成やイベント運営など、複数人の力を合わせなければならないケースでは、「ご協力の程よろしくお願いいたします」が好んで使われます。イベント告知メールやプロジェクトの依頼文などで、協力・支援をお願いするときに自然な表現として定着しています。
【例文】
社内連絡メール
「○月○日に開催するイベントにあたり、皆様には受付対応や会場設営などにご協力の程よろしくお願いいたします。」
社外連絡メール
「このたび新サービスをローンチするにあたり、弊社のメディア掲載に関してご協力の程よろしくお願いいたします。」
ビジネスでは、発注先や取引先に作業や確認作業を依頼する場合が頻繁にあります。その際、「ご協力をお願いします」だけだと少々あっさりした印象になることがあります。より丁寧な依頼や敬意を示すときには、「ご協力の程よろしくお願いいたします」という表現を使うと、柔らかくかつ敬意をもった依頼文となります。
【例文】
発注メール
「恐れ入りますが、本件の詳細仕様をご確認の上、ご協力の程よろしくお願いいたします。」
見積もり依頼
「見積書のご送付につきまして、ご協力の程よろしくお願いいたします。」
ビジネスで重要な案件ほど、上司や顧客などのステークホルダーに何らかの承認・決済・作業依頼をする場面が出てきます。「ご協力の程よろしくお願いいたします」は、相手に少なからず手間を掛けることが想定される場合に、失礼のないように依頼したいときによく使われます。ただし、相手が目上の立場や社外の顧客など、よりフォーマルなシーンの場合は、後述するような書き方の工夫や敬語表現の加筆も検討しましょう。
【例文】
上司への報告書確認依頼
「お忙しいところ恐縮ですが、報告書のご確認につきましてご協力の程よろしくお願いいたします。」
顧客への追加資料の提出依頼
「貴社のご担当の皆様にお手数をおかけいたしますが、追加書類の作成にご協力の程よろしくお願いいたします。」
「協力」は一般的な日本語の動詞「協力する」の名詞形です。そこに尊敬や丁寧の意を表す「ご」を付けた形が「ご協力」となります。「ご」は、相手を立ててお願いする際に付与される接頭語で、「相手の行為や持ち物」などを高める役割を果たします。
「~の程」という言い回しは、敬語表現の一種で「度合い」「程度」「範囲」を示す婉曲的な言葉です。「何卒よろしくお願いします」や「ご理解のほどよろしくお願いします」と並んで、特定の対象・行為について「その程度全般においてお願い申し上げます」という意味を込めています。これは日本語独特の曖昧さ・柔らかさでもあり、はっきりと「○○してほしい」と直接的に言うのではなく、相手に対して丁寧かつ柔和に依頼している印象を与えます。
「お願いいたします」と「お願いします」は、ビジネスの場ではしばしば混同されることがあります。「お願いいたします」は「お願いする」という動詞を丁寧語化した形であり、謙譲表現として扱われやすいです。対して「お願いします」はどちらかというと口語よりであり、砕けた印象を与えるケースがあります。そのため、ビジネスメールや公式文書では「お願いいたします」が好まれる傾向にあります。
「ご協力の程よろしくお願いいたします」だけでは、相手が「何をすればいいのか」分からないケースが起こり得ます。ビジネスのやり取りでは、最終的に相手にとって明確なタスクや行動を提示することが重要です。「ご協力の程~」を使う場合でも、具体的な指示や納期、目的などをきちんと補足すると、相手が動きやすくなります。
悪い例
「明日のイベントにつきまして、ご協力の程よろしくお願いいたします。」
良い例
「「明日のイベント準備に関して、○時までに配布資料を会場へご搬入いただきますよう、ご協力の程よろしくお願いいたします。」
敬語を使っているとはいえ、相手が顧客や取引先などの社外の立場であり、なおかつ自社にとって重要なパートナーである場合、より丁寧な言い回しが望ましいかもしれません。あるいは、上司や役職者に依頼する場合に「ご協力の程よろしくお願いいたします」だけだと事務的に聞こえる可能性もあります。その場合は、以下のようにクッション言葉や相手への配慮をもう一言加えると良いでしょう。
より丁寧な例
「お忙しいところ恐縮ではございますが、何卒ご協力の程よろしくお願い申し上げます。」
クッション言葉の追加例
「誠に勝手ながら、~していただけますよう何卒ご協力の程よろしくお願いいたします。」
「ご協力の程よろしくお願いいたします」は非常に便利な表現であるがゆえに、頻用されすぎる場合があります。同じ文面の中に何度も出てくると、「具体的に何を協力してほしいのか分からない」「相手に面倒を押し付けているのでは?」と感じられるおそれもあります。そのため、類似表現や別の言い回しを適宜活用して、文章全体を読みやすくする工夫が必要です。
ビジネスシーンで「ご協力の程よろしくお願いいたします」と同様のニュアンスで使える表現をいくつか紹介します。状況によって使い分けることで、文章にバリエーションが生まれ、より豊かなコミュニケーションが実現できます。
「何卒よろしくお願いいたします」
よりシンプルにまとめたいときに便利で、「何卒」が加わることで一層の丁寧さを表せます。
「ご助力いただけますと幸いです」
「助力」という言葉が使われることで、「力を貸してもらいたい」という気持ちを直接的に伝えられます。ただし、ややかしこまった響きになる点も注意が必要です。
「お力添えをいただけますよう、お願い申し上げます」
「お力添え」という表現は、ビジネス文書や議事録などでも使われる丁寧な言い回しです。相手の支援やサポートを仰ぎたいときに重宝します。
「ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます」
「ご理解とご協力」はセットで使われることが多く、「内容を理解していただいたうえで協力してほしい」というニュアンスを強調できます。
ここでは「ご協力の程よろしくお願いいたします」を使ったビジネスメールの例文を、件名から締めの挨拶まで示します。文面のどの位置にこのフレーズを入れるか、前後の文脈によって印象は変わりますので、全体の流れを意識するとよいでしょう。
件名:【重要】新規プロジェクトのメンバー募集について
各位
お疲れ様です。○○部の山田です。
現在、当部では新規プロジェクト「Project A」の立ち上げを予定しており、
担当メンバーを募集しております。
つきましては、下記の要件にご協力いただける方を募りたく、
ご興味のある方は今週金曜(○月○日)までにご連絡いただけますでしょうか。
<募集要件>
・週に数時間の打ち合わせ参加が可能な方
・資料作成や会議の進行など、積極的に業務に取り組める方
本プロジェクトは当社の今後の方向性を占う重要案件です。
何卒ご協力の程よろしくお願いいたします。
ご不明点などありましたら、遠慮なくお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
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○○部 山田太郎
内線:XXXX
メール:XXXX@example.com
件名:【ご協力のお願い】イベント「○○フェア202X」開催のご案内
株式会社○○
△△部 □□様
平素より大変お世話になっております。株式会社●●の山田と申します。
このたび、弊社主催によるイベント「○○フェア202X」を、○月○日に開催する運びとなりました。
貴社をはじめとする協力企業様と共に、業界を盛り上げることを目指しております。
つきましては、展示ブースや講演枠などでのご参画をお願いしたくご連絡させていただきました。
詳細につきましては、添付資料をご参照いただけますと幸いです。
大変お忙しい時期とは存じますが、何卒ご協力の程よろしくお願いいたします。
ご検討のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
ご不明な点やご要望などございましたら、お気軽にお申し付けください。
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株式会社●●
マーケティング部 山田太郎
TEL:XXX-XXXX-XXXX
Email:XXXXX@example.com
自分が相手をサポートする立場の場合
自分から相手に協力するのがメインなのに、形式的に「ご協力の程よろしくお願いいたします」と書くと、相手が「どちらがサポートされる側なのか」混乱してしまう恐れがあります。自分がメインで動く業務を紹介するときは、「ご安心ください」「私が引き続きフォローします」といった文言の方が適切です。
依頼内容が曖昧である場合
具体的に何をしてほしいのか分からないのに「ご協力の程よろしくお願いいたします」と書くのは、相手に負担を押しつける印象を与えかねません。確実なタスクや情報が固まってから依頼文章を組み立てるようにしましょう。
社内文化・相手の好みで避けられる表現がある場合
企業文化によっては、簡潔な表現を好むケースもあります。「ご協力の程よろしくお願いいたします」はビジネスシーンで一般的ですが、会社によっては冗長と判断される場合もあるでしょう。社内文書のガイドラインや相手企業の文体なども確認して使いましょう。
We would greatly appreciate your cooperation.
→ ご協力いただけますと大変ありがたく存じます。
Your cooperation would be highly appreciated.
→ ご協力いただけますと非常に感謝いたします。
We kindly ask for your cooperation.
→ ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
Thank you in advance for your cooperation.
→ あらかじめご協力に感謝申し上げます。
We appreciate your cooperation in advance.
→ 事前にご協力に感謝いたします。
We appreciate your support on this matter.
→ 本件に関しまして、ご支援いただき感謝申し上げます。
We would be grateful for your cooperation.
→ ご協力いただければ幸いです。
Your cooperation in this matter would be greatly appreciated.
→ 本件に関しまして、ご協力いただけますと大変ありがたく存じます。
We sincerely appreciate your assistance.
→ 心よりご支援に感謝申し上げます。
「ご協力の程よろしくお願いいたします」は、ビジネスシーンで相手に協力やサポートを依頼するときに非常に便利な定型表現です。しかし便利であるがゆえに、つい乱用しがちだったり、具体性を欠いたりするケースも少なくありません。使い方のポイントを押さえつつ、シーンや相手に合わせて微調整を行うことが、好感度の高いコミュニケーションにつながります。
ビジネスメールや会話の中で「ご協力の程よろしくお願いいたします」を適切に使えるようになれば、相手に誠実な印象を与えるだけでなく、依頼内容の意図もスムーズに伝わります。ぜひ本記事の内容を参考に、実際の業務コミュニケーションに活かしてみてください。そうすることで、あなたのビジネス文書ややり取りのクオリティは大幅に向上し、社内外の信頼関係も強まることでしょう。